さよならポックちゃん
今回は、再び話を19歳のスタッフポックちゃんに戻します。
愛人希望騒動から、再びバンコクに戻って来たトヨとRさんとポックちゃんですが・・・
前回までのポックちゃんの話はこちら
Rさんは、今回のことでかなり嫌気がさしているようで、ポックちゃんを朝、駅まで迎えに行くことも止めてしまいました。
あんな考えでいるような奴を、どうして僕が迎えにいかないといけないんですか?
仕事を舐めていますよ。
一生懸命に指導してくださったトヨさんやナコ先生(Natsuko)には申し訳ないですが、僕は次の子を探します。
彼女が気持ちを入れ替えない限り、これ以上あいつのやりたいようにさせるつもりはありません。
トヨさんも、遠慮しないで、叱る時は叱ってやってください。
・・・と言われましても、タイ語が通じないので叱れないのですが・・・
ということで、Rさんはポックちゃんとジップちゃんに対して、
ここはタイマッサージ店じゃないから。
日本の会社であり、日本のサービスと技術を提供する店だから、日本式のやり方についていけないのなら働いてもらう必要はない
ときっぱりと告げていました。
ジップちゃんは、Rさんの態度が厳しくなったのを受けてやばいと感じたのか、接客もかなりきちんと丁寧するように変っておりました。
でも、考えの甘いポックちゃんは、全くやる気なし・・・
なぜ、自分を愛人にしてくれないのか?
日本人男性ならみんなタイ人の若い女性を愛人にしたがるではないか?
と、そこにしか意識がいっておらず、自分の手で働いてお金を稼いで自立するということは全く論外の話のようでした。
なので、休まずに出勤はしてきておりましたが、ずっとラインで、以前、愛人だった日本男性に復縁を迫る連絡を取っていました。
Rさんは、そんなポックちゃんの仕事場での様子をジップちゃんに報告させておりましたが、
もう、やる気なしですね。
どこかで考えないと駄目ですね
と、腹を決めだしておりました。
そしてある日のこと・・・
いつもは、黒ガリンの関係で外回りの仕事をしていたRさんですが、夕方にお店に戻ってきて事務処理をしていました。
ちょうど、お客さんが二人来ていたので、ジップちゃんとポックちゃんは施術室に行っておりました。
先にジップちゃんが施術を終えて、丁寧な対応でお客様を見送っておりました。
そして、10分後くらいに、ポックちゃんの施術が終わったのですが、ポックちゃんはRさんの姿をちらっと見た瞬間に不機嫌な顔になり、そのままお客様をほったらかして、奥の休憩室に籠ってしまったのです。
お客様は、どうしていいのかわからない状態になっており、びっくりしたジップちゃんが飛んできて対応しておりました。
その様子を見ていたRさんはついにぶちきれまてしまいました。
そして、奥の休憩室に行って、ポックちゃんに
どういうつもりだ!!
と叱りつけたのです。
ところが、ポックちゃんは謝るどころか、
Rさんが悪いからだ。
私は嫌だと言っているのに仕事をさせるからだ!!
私は田舎に帰りたい。
とヒステリックになって反抗しだしました。
だから、田舎から帰る時に
「そのまま田舎に残りたいならそうしてもいいから、どうするか決めなさい」と言ったでしょ?
バンコクに戻るといったのはポックでしょ?
とRさんが諭しても、全く耳をかさず、
もう仕事はしたくない
と言うので、
じゃあ、もう働いてもらわなくてもいい。
辞めるなら好きにしなさい。
と印篭を渡したところ、大声で泣きながらお店から出て行ったのです。
トヨは、こうなることは時間の問題だと思っていたのですが、
ポップちゃんにしても、ポックちゃんにしても、19歳でまだ未成年だけど、それにしても幼すぎるな〰。
この年齢の子はやはりうちで雇うのは無理なのかもしれない・・。
と思いました。
最初に雇っていたポップちゃんも、今は大学に行きながら、飲み屋で
男の人と一緒にお酒を飲んで酒代の1割のチップをもらう
というアルバイトをしているそうです。
せっかく、ナツコにあんなすばらしい技術を学んで、それを十分に活かせる素質と能力があるのに・・
なんてもったいない人生を選択するのだろう・・・内容を入力してください。
と、とても悲しくなりました。
そんなことから、ポックちゃんはみなさんの想像通りに、田舎から帰って来てから1週間もしないうちに辞めてしまいました。
今度は42歳の新しいスタッフを雇うことに
ジップちゃんも、ポックちゃんにかなりうんざりしていたようであり、
私ひとりでも、やっていけますので、次はゆっくりと良い人を探してください
と余裕の発言をしておりました。
このジップちゃんの愛想の悪さも、慣れてくるとそれほどでもなくなり、単に人見知りが激しい子であることがわかりました。
彼女は、片言の英語が喋れましたので、なんとかトヨとも片言の英語同士で会話はできるようになりました。
また、時間にはとてもきっちりとしており、掃除も非常に丁寧にしてくれる子ですし、接客態度もずいぶんと良くなってきましたので、とりとめて彼女には問題は見当たりませんでした。
けれど・・・
少しづつお客さんが増えてきたので、やはりもうひとりスタッフは絶対に必要でした。
Rさんも、色々と探してくれていましたが、タイマッサージレベルの子はいくらでもいるけれど、またポックちゃんの二の舞になるのはこまるのでかなり慎重になっていました。
そんな折、日本のRENEの社長であるKちゃんから
今度、ビューティワールド大阪会場の展示が始まるので、出展することにしました。
トヨちゃんにはもちろん戻ってきてもらわないと駄目やねんけど、会長が所要で出れないため、できればRさんにも一緒に来て、手伝ってほしいねん。
会場設定等で男手がいるし、トラックを運転できる大型免許を持っている人が必要やねん
という依頼がきました。
Rさんは、2週間もジップちゃんひとりにして不在にすることがかなり心配のようでしたが、Kちゃんからの依頼なので断れません。
ジップちゃんは、2週間位ひとりでも大丈夫ですと言っておりましたが、
やはり若い女性だし、お店の営業時間は8時までだし・・
お金もRENEの商品もお店に置いている・・
ということで、強盗でも入られたら・・・
と考えると、やはり心配は拭えません。
それで、Rさんから
今、働き口を探している女性がひとりいるんだけど、年齢が42歳で日本語が喋れる人なんです。
知り合いのタイ人が、1年前に日本企業の運転手として働いていて、そこに事務職で働いていた人らしいのですが、その会社が数ヶ月前にタイから撤退することになって失業してしまったそうなんです。
日本語も喋れるし、若くないし、良いかなと思うんすが、エステ等のマッサージの経験が全くないので、アンちゃんの時のように上手くできないと言って、すぐに辞めてしまう可能性もあります。
なので、トヨさんが、もうすぐ日本に帰るタイミングで雇うのはどうかなと思い、返事を先伸ばしにしているんですが・・・
とりあえず1ヶ月、試験的に使ってみるつもりで、まずは俺たちが日本に行っている間に、留守番として受付でもやらせてみましょうか?
もし、センスがあって使えそうなら、もう一度トヨさんにタイまで指導に来てもらうということでKさんにお願いしてみます。
という提案がありました。
トヨは、日本に帰国する前に、その人に一度会っておきたいと思いました。
そして、一度夕食を一緒に食べることにしました。
その人は、アップルさんという名前であり、
年齢は42歳ですが、年齢よりは老けて見えました。
身体はとても細いのですが、姿勢が悪く猫背なので若々しさを感じられなかったのかもしれません。
中華系のタイ人なので、日本語を喋ってると日本人に見えました。
日本語を話せるので、Toyoとは直接会話ができましたが、とてもオドオドしていました。
Rさんに
私って、そんなに怖く見えるのかな?
って後で聞いたくらい、トヨを怖がっているような感じありました。
トヨ的には、元気のなさが気になりました。お店のイメージが暗くなる気がしました。
ジップちゃんも、最初は不愛想であり、トヨが描く笑顔で接客ができる子とは程遠い印象がありましたが、不愛想なだけで動きはキビキビしていて元気のある子なので、その点では合格点を出せる子でした。
でも・・・、アップルさんは、「元気がない、しんどそう・・・」というのが、一番最初に受ける印象になってしまうので、エステサロンのスタッフとしてはどうかな〰という不安を感じざるを得ませんでした。
それでも、とりあえず、トヨとRさんが日本に行っている間の受付としてアルバイトで来てもらうことにしました。
翌日、お店でジップちゃんに引き合わせところ、ジップちゃんの印象はそれほど悪くないようで、すぐに二人はうち解けておりました。
ジップちゃんが、アップルさんに対して一通りお店のメニューや商品の説明などをしてくれましたが、頭は良いみたいですぐに理解しておりました。
びっくりしたのは、その後お店に来たお客さんに対し、さっそく自ら進んで接客をしだしたのですが、とても上手であり、まるであのオドオドとした昨日の印象とは違い、別人のようでとても活き活きしているのです。
それで、トヨが
接客業とかは好きですか?
と聞いたところ、
人と話をするのがとても好きです。
と言う返事が返って来ました。
ひょっとしたら、使えるかもしれないと思ったとよは、
アップルさんは、とても接客が上手だと思います。
けれど、もし、続けてうちで正社員として働いてもらうとしたら、受付だけしてもらうわけにはいきません。
必ず施術をしてもらわないと駄目なのですが、その点はどう考えてますか?
という質問をしてみました。
アップルさんは、
仕事がないので雇ってほしいのですが、正直、マッサージはしたことがないので自信がありません
と言うので、
では、一度、どんなものかやってみますか
ということになり、ジップちゃんと一緒にアップルさんにマッサージを教えてことになりました
でも・・・やはり思った通り、話にならない状態です。
人の顔や身体を触ったことが一度もない人には、かなりハードルが高いのがマッサージです。
一度や二度でできるものではないのですが、手の使い方等を見ると、だいたいその人が素質があるかどうかは判断ができます。
一番最初にナツコが指導してくれたポップちゃんは、全く経験がないのにもかかわらず、手先が器用でとても素質がありました。
そういう素質の点から見てみると・・・
アップルさんは、かなり厳しいな〰と思いました。
あとは、彼女の根性と努力で、上手くなってもらうしかありません・・・
が、アップルさんにその根性と努力はあるのでしょうか?
とりあえず、ジップちゃんには、トヨ達が日本に帰国している間の2週間、アップルさんに少しずつでいいのでマッサージのやり方を教えていってほしいとお願いしました。
そして、いよいよ、トヨとRさんは日本へと戻ることになったのです。
ビューティーワールド大阪
ビューティワールド大阪展は、東京のときよりもブースが広くなっていました。
元インテリア会社経営のS会長の指示のもと、S会長の娘さんの旦那さん、そしてRさん、RENEの商品開発を手伝ってくれているアイブロウカットのジュンペー君とお弟子さんの4人が会場を設営してくれました。
とってもよく働く4人で、あっという間に会場が設営されました。
随所にS会長のこだわりがみられ、とても綺麗で素晴らしいブースでした。
S会長は、長年インテリアの関係でこういった展示会には頻繁に出展されていたらしく、そのため長年それをお手伝いしてきたS会長の娘さんも手慣れたもので、手際よく商品の陳列等をしていきます。
トヨは、
すごいな〰。プロだな〰
と感心してその様子を見ておりましたが、全然、何をしていいのかわからず、動いては娘さんに
トヨちゃんそれはこっち〰。
ちがうちがう、それはここ!!
と叱られてばかりおりました(笑)
また、荷物の搬送の時のトラックの運転や、終了時の荷台への荷物の積み込み等、Rさんが手慣れているのにはすこしびっくりしました。
日本では大手ゼネコンに勤めていたので、大型トラックや特殊車両の運転免許はほとんど持っています。
さらに、その後、大手居酒屋チェーンの関西エリアのチーフマネージャーをしていたので、毎月、どこかで新しい店をオープンさせていました。
手際に関しては、その時に鍛えられましたよ〰
と言っておりました。
Rさんや、S会長、S会長の娘さんや旦那さんの、手際の良い仕事ぶりを見て、トヨは自分が知らない別の世界を見た気がしました。
この人達からすれば、警察の仕事は未知のものだろうけど、私にとっては、この人達の仕事は全く未知のものであり、ただただ感心させられるな〰
と思いました。
このビューティワールド大阪会場にはナツコも勉強に来ており、RENEのブースに何度も顔を出してくれておりました。
そして・・・びっくりしたのは、トヨが休憩から戻って来ると、ナツコが、お客様の接客をして商品を販売しているのです!!
どうしたん?
カヨさんに、手がまわらなくなってきたから、トヨちゃんがもどってくるまで手伝ってほしいって頼まれた〰
気軽にナツコに頼んでしまうKちゃんもすごいけど、気軽に引き受けるNatsukoも凄い!!
こういう気さくさがナツコの良さであり、Kちゃんもトヨも、ついつい甘えてしまうのですよね〰
ビューティワールド大阪展は、大好評で終了しました。
そしてRさんは、その他諸々の所要をこなした後、荷物の搬送で「腰が痛い」と言いながら、バンコクへと戻っていきました。
トヨは、バンコクのことが心配ではありましたが、日本での仕事が溜まっていたので、暫くはバンコクに行けそうにはありませんでした。
さて・・・ジップちゃんとアップルさんは、うまくやってくれてるのでしょうか?